その国に居たのは 一人の神様だった。


F.原材料
「愛情だよ。」
「は?」

 間髪入れずの桃の声に、「神様」は何だよと不満げな声で返した。

「だから、俺の栄養源。」

 そんな莫迦な、と思うものの、神様の食事など想像の範疇に無いのでそんな事も言えず、ぱくぱくと桃は口を開閉した。

「そうやってると、金魚みたいだぞ。」

 俗っぽい例えに突っ込む気力も無い。

「まぁ、こっちとしては受け取れればソレで良いんだが、口移しが一番効率が良いんだよな。何より味がある。」

 そこまで言うと、「神様」は得意げに口の端を上げた。

「理解したか?桃。」

「ぜんっぜん。」

 なんとなく悔しくて、桃はそうきっぱりと答えた。









G.黄色い感情
「………まぁいい。」

 引きつった顔をした後に、「神様」は諦めたようにそう呟いた。
 叩かれた頬をそっと撫でる。

(…親父達がコイツの血筋を妻にしたのも解る気がするな)

 どこか変な色の感情が溢れてくるのが解った。
 例えるなら黄色だろうか。

(普通なら、力に当てられて人形状態なのにな)

 コロコロと表情を変える目の前の少女が面白くて仕方なかった。

(…あぁ、そうか)

 これが楽しいというんだ。
 黄色い感情の名前を見付けて、「神様」は少し嬉しそうに笑った。








H.心臓に宜しくないコース
(愛情って何?!え、ど、どういう事?!)

 ぐるぐると考えても答えが出なく、それでも考え続けるので桃は半分パニックになりはじめていた。
 心音がやけに五月蠅い。
 何十回と口付けの感触が甦ってくる。

「…何、惚れた?」
「?!」

 唐突の「神様」の台詞に、桃は勢い良く「神様」を振り返った。

「な、ななな、そ、そんなわけっ!」

 バクバクと周りに聞こえるのではないだろうかと思う程心臓は激しく動いた。

(ない、ない、あるわけナイ、あるわけナイ、ああもう治まれ心臓っ!!)

 半涙になりながら自分の心臓を治めようとしている桃を見ながら、「神様」は小さく笑った。

(結構、脈ありかもな)











::後書::

わけわかんねぇ。(笑)
どんどん凄い方向に行ってる気がしますが
ちゃんと戻ってきてくれるかカナリ心配です…(汗)